では、前回からの続きで自分のホームページからの転載でコメントも交えつつ、バックロード製作の思い出を語っていきたいと思います。
(2日目)朝を迎えたものの、今一つノリが悪い。
当然、前日の不安のせいだ。果たして形になるのだろうか。何か途轍も無く重たいものがのし掛かっているのだ。決して鉛インゴットとかではない。プレッシャーだ。
「これで取り返しのつかない失敗になったらどうする」
これまで幾多の危機を乗り切ってきたが、今回のは何せユニットの価格も、板の価格もかなりのものだ。適当なごまかしが効く相手かどうか。参ったなあ…どうするか。とは言え、元来それ程プレッシャーを気にする性格ではないため、気分転換も兼ねてターミナルを買いに大須へ。雨の中パーツ屋で買ったターミナルは本来はスピーカー用ではないだろう。足が短く、ベニヤ板では厚すぎるからだ。実は前日ホームセンターへ行ったときに端子板になるような板切れを買っておいた。これを使ってスピーカー用ターミナルにするのだ。その板に穴を開けたり、といった作業は必要だが。
さて、そんなわけで昼過ぎから作業はスタートした。
前日剥がしたところを気を付けながら再び貼り付ける。それを乾燥させる時間を利用してターミナルの製作。この板切れ、とは言っても縁には飾り仕上のしてあるなかなか洒落たものに穴を開け、端子を差し込んでナットを回すとちょうど良い長さが残った。この板より少しでも厚いとアウトだったので、今回は運が良かったと言える。内部配線用ケーブルも結線しておこう。今回は半端ものを安く買った、スペース&タイムの「エントラ」を使う。端子はネジ留めで、ハンダ付けの必要がないのは時間が短縮できて有り難い。
次はヘッド部分だ。これは順調に進んだ。やはり小さいし、ただ順番に箱を作っていくだけなので楽なのだ。少々浮いている部分も端金を使えば大丈夫。今回の製作で初めて端金を使ったが、やはり便利だ。特に釘うちを最小限に、と思っているので大変有り難い。
ヘッドを完成させ、先ほど作った端子をブチルゴムで貼り付け、これでヘッド部分はとりあえず完成。さあ、また胴体部分に戻ろう。
しかし、組み上げていくとどうしてもずれてくる。一体みんなはどうやっているのだろう。カンナを買っておけばよかった。それでもとにかくずれを影響のなるべく少ない部分に逃し、何とかはめていったが、底板を付けていて愕然とした。
「全然平らにならないじゃないの」
参った。このままでは愛称が「ピサの斜塔」になってしまわんばかりの勢いだ。いや、下手をするとユニットの重みで倒れてしまうかもしれない。とにかく、横板を端金を使って仮留めし、足りない(2本しかない!)ので以前何かで利用した結束バンドを持ちだして締めつけた。ふう。大して暑くもないのに汗をかかせやがって。しかし、これでどうなるのかよく分からなくなってきた。冗談抜きで、「明日はどっちだ?」という心境で明日を待とう。(02.5.4)
この時初めて「端金(ハタガネ)」を使ったんですね。今でも大事に使っています。それにしても難関に次ぐ難関。本当によく頑張っていたなあ、自分…とあらためて実感します。ちなみに「プレッシャーを気にする性格ではない」云々、と書いていますがキャラ作ってますな。若いなあ(笑)、見栄張っていましたわ。
しかし本当にこの「内部構造から組み立てる」のは自分には難しいですわ…。ただ、この時はラワン合板5枚使っていたのですが、そのうち何枚かは正確に1.5mm厚ではなかったんですね。測ってみると1.6mm厚という板もありました。そりゃ、ずれてきますって。
そう言えば「スペース&タイム」のケーブルとか、懐かしいですね。鮮烈な音で価格もお手頃、好きなケーブルメーカーだったのですけど。
(3日目)妙に早く目が覚めてしまった。前日の雨と打って変わって、いかにも行楽日和!と言った感じの快晴であった。カーテンを開けっ放しだったので、その明るい日差しが目を覚まさせたのだろう。まあ、作業は早くから始めるに越したことはない。
ヘッド部分にペーパーをかけ、特にフロント部分はラウンドバッフルにした。処理部分は少ないので、楽にできた。ヘッドの作業は気が楽である。そして問題の、昨日結束バンドで締め上げた胴体部だ。端金を外し、バンドを解く。…ずれているじゃあないか。息が詰りそうなほどの嘆息が思わず漏れる。いびつだ。「ひょっとしたら連休中に間に合わないのでは?」という危惧が体を駆け抜ける。予定では今日完成して最終日はどっぷり試聴に浸る、という筈だったのに、おかしいなあ。甘かったなあ。
また、めりめりめりと引っぺがす。もう何のためらいもなくなった。やり方を変えよう。CW型のように、横板の片方の上に、内部ホーンを配置して組んでいく方法だ。鉛筆で接着部分を書き込み、そしてそこに接着剤を塗って部品を載せていく。この方法でも当然ずれは出てくるが、修正がしやすい。
ここで10時になったのでホームセンターへ向う。先日とは別のところだ。割と近くに2軒もあるのは有り難いことだ。ここには半透明ペンキがあった。今回はオーソドックスに「チーク」色にする。この形で色まで個性的だとどんなものになるやら想像がつかなかったからだ。そこでまた端金を2本追加、カンナもおそらく学校工作用の安いやつを買った。学校用といえば、懐かしの彫刻刀も買った。これはFE168ESのマグネットがでかいため、端子部分だけユニット穴に座繰りを入れる必要があるからだ。まあ、88ESもそうだったが。
遂にブチギレ?て、破壊衝動が出てまいりましたね(笑)。やはり自分の技量では内部だけ先に組み立てるのは不可能だったようです。まあ、ここでやり方を変えたのは良かったんじゃないでしょうか。掲示板でのやり取りで、設計者である「ひょせん」さんに「いや、大変なものを設計してしまったかな」というような事を言われた記憶があります。いやいや、全ては私の技量不足ですから…。
ヘッド部分、「ラウンドバッフル」とか言っていますが、ちょっと面取りした程度ですわ。少々盛ってますよね。
ホムセンはまだ近所にカインズはオープンしていないはずなので、別の店でしょうね。当時はフジヤ(現・バロー)とカーマがありました。ペンキはニスっぽく木目を生かす半透明タイプがお気に入りでした。また当時はグリーンやらくすんだブルーやら、「ちょっと変わった色」を使ってみたくて試してもいたのですが、これに関しては正攻法で行こう、と「チーク」にしたのでした。大きいからもっと薄い色でも良かったかもしれません。ただシナ合板じゃなくてラワン剥き出しなので、あまり薄い色だと意味が無かったかもしれませんね。
(3日目続き)ヘッドを塗装する。やはりチークを塗るとなかなか高級感が出てくるが、普通な感じでもある。今までの色が普通じゃなかったから当たり前だが。茶系では薄くも濃くもなく、ちょうどいい色だろう。
カンナを買ってきたので、はみ出そうな部分を削る。最初うまくいかなかったが、一旦うまく行くと、どんどん削れていく。これは楽しい。楽しくて削り過ぎには気を付けよう。暑くて堪らないから、適度で済んだものの。結果としては、削りすぎはしないが、水平を出すのが難しく、別のずれが出来てしまった。もういいよ、別に。ちゃんと立つことさえ出来たら。こうなったら「何を優先するか」が重要になってくる。ずれはなるだけ後ろに追いやったが、前方にもどうしても歪みは出てしまう。仕方がない。これを人に見せたらまた何とか言われるだろうなあ。今回は綺麗に作るつもりは「多少は」あったんだけど。また質実剛健がモットーになってしまったか。しかし、そうこうしているうちにかなりの部分が組み上がってきた。
端金は4本になったが、まだ片方に全部使ってしまうので1度に両方できないのが痛い。その間にヘッドにユニットを取り付けてしまおう。
重い。ハンダ鏝が強力なマグネットに吸い寄せられそうになり、なかなかスリリングだ。普通のユニット違って、端子の+と-が随分離れている。それがまたいちいちユニットを動かさねばならず、やりづらい。ようやく出来た!と思ってさあネジ留め…と思ってよく見るとケーブルを逆に付けてしまっていた。うわあああ、また余計な時間を。がっくりしながらやり直し、…の前に、そうだ彫刻刀だ。気が付いてよかった。端子を逃がす座繰りを彫刻刀の丸刀で削る。これはなかなか具合がよろしい。
その座繰りのお陰ですんなりユニットは収まった。ネジ穴は8個あるが、そのうちの半分を「制振合金」製ワッシャーを入れる。例の真鍮リングは無いが、これでも少しは効果があるだろう。もっとも、このヘッドは大きさがギリギリ、リングをつけたらはみ出してしまうが。ネジ穴は予め開けておいたのだが、短すぎたのか、途中でストップしてしまう。もう1度ネジ穴を大きく開け、ようやく締め終わる。ふう。この作業も意外に疲れる。
とりあえずヘッドが完成したので、繋げて鳴らしてみる。逆さに置けばチムニーダクトの小型バスレフとなるわけだ。音はさすがに低音は余り出ていないが、ハッキリクッキリ音が出てくる。ピアノのタッチ、ベースのピチカートは生々しさが出ていた。これは期待できるな。さすがにハイ上がりの状態なので、あまり真面目に聴いていると疲れるが。
疲れる、と言えば今日は朝早かったので何だか眠くなってきた。暗くなってきたし、しばし休憩。ごろりと寝転がるとたちまち夢の中…(02.5.5)
「ズレを後ろに追いやる」、せめて目に見えるフロント側はできるだけスッキリ見せようと思い立ったわけですね。こうなったら…という開き直りが産んだ策と言えるでしょう。
ヘッド部分は完成させました。「制振合金」とはこれまた懐かしいワードが出てきました。当時は色々なアクセサリーがありましたね。
エージング的に、ヘッドだけで鳴らしてみた時に「お、これはかなりイケるかも!」と確信のようなものを感じました。それは10年以上メインとして使っていた事からも「当たっていた」と言えますね。自分に合っていたという事でしょう。つくづく、良いユニットに巡り会えたものだと思っています。
かなり当時の自分自身もスピーカーも何だかボロボロな状況ではありますが、次回はいよいよ完成!
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