以前も書いたとは思いますが、実家にフォステクスの16cm限定ユニット「FE168ES」を使った自作バックロードホーンを置きっ放しにしています。いつも「邪魔だから片付けろ」と言われ続けていますので、さすがに何とかしなきゃいけませんね。とにかく、現在住んでいるマンションで使うのは近隣に迷惑と思っていますし、そもそもスペースがありません。一応、決心しました。まずは「ユニットは売ってしまおう」と。こう書いていても何だか寂しさが込み上げてきますね~。実家時代には本当に気に入って使っていましたから。しかしもう10年近く放ったらかしなわけで、スピーカーのためにも良くないですね。
そこで今回は「さらばFE168ES」として、製作時の模様を当時のホームページから転載しつつ語っていきたいと思います。製作したのは2002年の黄金週間。連休だと言うのに家に篭って制作に没頭していたのでした。若気の至り的な文章、しばらくご容赦願いたいと思います。
最近どうも落ち着かない。
何故か。実はうれしい悩みに身を焦がしているのだ。
まだ手元に届いてはいないのだが、あの限定ユニット「FE168ES」が手に入ることになったのである。素晴らしい。16cmの限定ヴァージョン、かなり強力なユニットのようだ。もう諦めていたので、今回の入手は素直にうれしい。さすがに20cmの208ESではあまりにも大げさだったので、最近の再発売も見送っていた。やはり限定ユニットは16cmが限界だと思う。
さてその限界ギリギリの168ES、問題は何を作るかである。時々ここに載せられるスピーカー達の写真を見ても分かる通り、もう置く場所がない。例え今のスピーカー達を全部のけるにしても、例えば「スーパーレア」は入るか入らないかギリギリの幅なのだ。そんなに狭いのか、この部屋は?とも思うが実際そうでもない。整理整頓がなされていないからこうなるのかもしれない。アキュフェーズのフロントパネルが引っ掛かるのでもっと幅の広いラックが欲しかったのだが、これでまたその計画は延期だ。あるいは縦型ラックにする、と言う手もあったけど。
話を戻して、さあ何を作るか。スーパーレアが大きすぎるとすれば「D-37」か。あれならば横幅はかなりスリムだ。ただ168SS用に作られたものだから結局もう少し幅を拡げる必要があるかもしれない。あまり拡げるともう限界がやって来てしまう。困ったものだ。
スリムのまま何とかならないか、と考えるとあの魅力的な共鳴管「ネッシーJr.ES」となるが、あれはさすがに長すぎる。音はかなり良さ気だが。しかし家に彼女も呼べない。呼ぶ彼女はいないからいい、という問題でもない。「テンナンショウ」ことD-130あたりをもっと強化して…などとも思ったが、やはりあまり格好がよろしくない。それに168ESには多少強化したところで頼り無さそうだ。
あと何かいい形はないか…と考えると、「ト」があった。ウーファーであるFW208N用に設計されたD-132だ。これは細長く、しかも強力そうだ。もっと16cm用に幅などを調整すれば結構いいものになるのではなかろうか。
こういう悩みは大変楽しいものだ。しかし、「何を作ろうかなあ」と考えていて時があまりにも過ぎ去ってしまうことはまずい。なるべく連休を使いたいのだが…それまでに決まるだろうか。(02.4.16)
今となっては、どのように入手できたのか忘れております。誰かが「2セット買ったけど、1セット売ります」という感じだったんですかね?最初はこれで何を作るのか、かなり迷っていましたね。ここで触れられている「D-132 ”ト”」というのはバッフル部分の突き出ているのでカタカナの「ト」に見えることから名付けられています。
やはり「ト」は大きすぎるかもしれない。
あれを横に寝かせて側板を貼り付け…と考えると2本同時にできるもんじゃあない。魅力的だし、もしかしたらなかなか良いアレンジが出来るのではあるまいか…と思って一人喜んでいたりしたのだが、やはりでかい。いや、確かにでかくなって仕方のないことなのだが、もっと作業のしやすいものがよかろう。
そうこう考えているうちにユニットが届けられた。重い。箱から出してみると16cmであることは間違いはなく、むしろコーン紙部分は小さいくらいなのだが、マグネットの大きいこと大きいこと。本当にユニット開口部ギリギリである。端子のついた部分の方が奥まっているのではないか。これでいいのか。気流抵抗の問題はないのか。88ESの時と同様、端子部分は座繰りを入れなければならないが、+と-がかなり離れた位置にあるので、注意しないと大変なことになってしまいそうだ。こういう部分もさすが限定ユニット、簡単には進ませてくれそうにない。負けないぞ。
コーン紙の凹凸はまさに和菓子のよう、ちょっとざらついた質感はモナカに似てなくもない。形は肉まんっぽくもある。これが美味しい音を出してくれるのだ。いやが上にも期待は高まる。
さあ、どれにしようか。D-37か、スーパーレアか、はたまた「ト」か。
実は思わぬ(いや、他人が)伏兵がいたのだ。それは人形型バックロード。長岡鉄男先生の「諸国漫遊記」にも登場された、ひょせん氏の設計だ。「BH-1609ES」という型番の図面を入手して、いろいろ見たところ、幅360ミリ、奥行き400ミリと大変バランスの良い寸法であることが分かった。これならばスペース的にピッタリなのだ。スーパーレアを少し縮めたような塩梅。その分首を短く、胴を長くしたわけだ。これはいい。
と、いうことで現時点では「BH-1609ES」にほぼ決定、という状態だ。ただ、部品点数が結構多いのが気になるところ。製作時間が他よりかかるかもしれない。後2~3日、よく考えてみようと思う。(02.4.21)
感動のユニット到着。フォステクスの限定ユニットは本当にマグネットが大きいですからね。重いです。そして何を作るのかも(ほぼ)決まります。当時バックロードホーンビルダーとしてネット界で知られていた「ひょせん」氏の設計です。引越しのどさくさで、設計図を紛失してしまっているのが残念…。
(1日目)作るぞ。今回は何せ大物だから期待と不安と悩みと逡巡がごちゃまぜになって、どうも情緒不安定になっていた(大げさな)。しかし、決めたのだ。
フォステクス限定ユニット「FE168ES」をどんな箱に入れるか。かなり迷ったのだが「コラム」のコーナーでもほぼ意を決したと書いていた、ひょせん氏の「BH-1609ES」を作ることにしたのだ。スペースファクターには優れていそうだが、部品点数が多く、時間がかかるかもしれない。やるならこの4連休しかないのだ。
材料はラワン合板を5枚。かなりの量だ。東急ハンズにカットを依頼したが、カット代金の計算に随分時間がかかったものだ。それでも板自体の料金と合わせて3万円台で済んだのは幸いとも言えよう。ケチってシナ合板ではなく、ラワンにしたためだ。最近はシナアピトンだとか、フィンランドバーチといった、密度が高くて丈夫で鳴きのない合板が流行だ。しかし、そう言った材料はそこらで即手に入るものではないし、値段もさすがだ。ネットで依頼してカットサービスまで含めたら、20万くらい行ってしまうのではなかろうか。やはり自作の王道、コストパフォーマンスで勝負だ。
さて、連休前日に届いた板の山を見てさすがに唖然。
「多いな…、これは。どうするんだあ。」
まさにそんな気持ち。親達には勘当されんばかりの視線を送られるし、なかなか前途多難な予感を催させる。しかし、やはり期待の方が大きい。いい音がしそうだ。
そして連休がスタート。さあ作業…いや、大切なことを忘れていた。接着剤が無いではないか。以前使った「タイトボンド」はごく僅か残っているが、これでは足りない。ホームセンターへと車を走らせる。目的の接着剤と一緒に端金や、サンドペーパーなども買っておく。本当はペンキも欲しかったのだが、以前よく使っていた半透明のやつが無くなっていたので、とりあえず買わずに帰ってきた。
家に帰ってまた気が付いた。ターミナルが無いではないか。今回は良いものを使おうか、ということでトリテックのやつでもネットで注文しようと思っていたのだが、思っただけだった。まずい。このスピーカーはスワン族と同じで、ヘッド部分を先に作れば当然ターミナルを早くつけることになる。結局、ヘッド部分を後回しにしよう、ということで決まった。また夕方か翌日の朝にでも買いに行こう。トリテックはないが仕方があるまい。
合板は4個口で送られてきた。一つ一つが重い。開封して、整理してみよう。この「BH-1609ES」は、ヘッド部分と胴体を最後にドッキングさせるので、分けておくと作業がしやすいと思ったのだ。それにしても開けてみると一層その物量の多さに驚かされる。まあ、慌てずにやっていこう。
ターミナルに関わりの無いヘッド部分をまず作り、そして胴体部分に掛かる。ここはやはりスワンに似た構造なので、板を縦と横に井桁のように組んで作っていく。実際にやってみるとこれが難物だ。何せ最後に横板を張り合わせないといけないので、ピッタリと寸法を合わせないとずれて貼り合わせることが出来なくなってしまう。慎重に慎重に。余った板で押えてずれないようにしながら貼り合わせていく。
しかしそれでも悲劇は起こってしまった。
一方がいつの間にかずれてしまっており、横板を全く貼ることが出来ない状態になっていたのだ。これは泣きたくなった。やはり接着剤だけでの作業のため、いくら板で押さえつけてあったとはいえ、流れていたのだ。それがほんの1ミリ程度であっても、ずれは他のずれを生み、ガタガタになってしまうのだ。何と恐ろしいのだろう。とにかく、修復を図ってみる。
修復、とは言っても板を引っぺがすしかない。しかし、木工用セメダインはかなりの強度でついてしまっており、力任せに引っ張っても取れるもんじゃあない。ドライバーなどでこじ開けようともしたが、曲がってしまう。結局ノコギリで接着部分をぎしぎしと切る、と言うか引く、と言うか。そうして時々引っ張ってみる。しかしまだ強情だ。こんなに丈夫ならある意味安心なのだが、この場合は物凄くうっとうしい。もう夜になっていたのであまり音も立てられない。明日を待って金づちか何かでぶっ叩いてみようか、と思ったが、とりあえずもう1度引っ張ってみよう、と足で支えてぐいと引っ張ってみると、「ばりばりばりぃぃぃぃ」と音を立てて板は剥がれた。合板なので、本当に層が剥がれてしまっている部分と、逆に板に木口が残ってしまっている部分と、やけに派手なことになってしまった。あーあ、これじゃどうなることやら。やたらと不安のパーセンテージを多くしながらも、翌日に全てを託すことにしよう。(02.5.3)
製作第一日目。しかし何せサブロクのラワン合板(15mm厚)5枚ですからね。家に届いた時は「これは大変な事をしようとしてしまった…」と冷や汗が流れたことを思い出します。まあ、ここで退くわけにもいきませんからね(笑)。当時はできるだけ軽いホームページを、というコンセプトでやっていたので、大変小さくて粗い写真ですね。そこから分かるように、ブルーシートを部屋に敷いて作業をしておりました。
そして早くも難関が立ちはだかります。先に内部の音道を組み立てるようになっていたため、ピッタリ合わないと側板が付かないんですよね。一度接着した箇所をひっぺがす事態になったりと前途多難な初日であったわけです。よくまあ「キィーーーーッ」「もういい!」とか頭に血が上って投げ出さなかったものですわ。
そんなこんなで、続きます。
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