黄金週間の4連休を使ってフォステクスの16cm限定ユニットで大きなバックロードホーンを作ってしまおうと目論んだ20数年前、その連休も最終日となりました。何か随分やり残している事がありそうな感じではありますが…でも無理矢理終わらせたような…。
(4日目)筋肉痛だ。うーんさすがに今回の自作は力仕事なので、手足腰あちこちが痛い。ただし起床は普通の休日時間だったので、そんなに疲れは残っていない。やっぱり睡眠は必要なんだな。
いよいよ連休最終日。何とか今日中に作ってしまわねば、という焦りもあるが、あまり慌ててまた失敗、なんてことになっても困る。じっくりやっていこう。端金はどうせ4本、片方づつしか作業はできないのだ。それにしても随分散らかしたもんだ。398円で買ったブルーシートが役に立っているが、終わったらごみはこのまま全部包んで捨ててしまおうか、と思うくらいだ。
これまでも空いた時間を塗装に使っていたが、まず影響のない部分からペンキを塗っていく。例えば開口部の内部とか、だ。そして横板が両方付いて、途中まで塗装が終了したものと、寝かせた状態で上から横板を載せ、端金を締め、重りに雑誌をどっさり(雑誌ならば重りとして腐るほどある)積んだ状態で、またホームセンターへ向った。
何故そんなに何度も行くのかと言うと、どうしても買うのを忘れるものが出てきてしまうからだ。今回は実際開口部の下に敷き詰める砂利を買うつもりだったのだが、良いものが無かったので次の機会にしよう。どっちにしても今日中にそこまで出来る気がしないし。とりあえず砂利用の袋(ジッパー付きが便利、ジップロックは商品名)を買い、無くなりかかっていたブチルゴムテープを買う。
さらに、ウロウロしていた私の目に留まったのが¥1980という値段を付けたサンダーだ。これは安い。かなり作業が楽になること請け合いだ。ちょっと迷った末買った。最初からこれがあればもっと早く済んだかもしれないが、まあ屋内でやるものでもないからそんなに頻繁に使えないかもしれない。
帰って早速サンダーを試してみよう。2枚重ねにする横板(側板、と言ったほうが良いのかな?)4枚を庭に持ちだし、動かしてみる。音は予想通りうるさい。しかし面取りをしようと当てると、みるみる削れていく。これはいいや。素早く4枚の面取りを終わらせ、ペーパーを細かい目に替えて表面の仕上げをする。あっという間に終わった。5月とは言え、快晴で気温も高い中での作業。手でペーパーなりやすりを掛けていたら、時間も掛かるうえに汗だくになっていただろう。それが今回はサッパリしたもので、やはり文明の利器は違う、と感じさせた。慣れればもっと色々なところに使えるだろう。また、電動ドリルドライバーなどの電動工具もやはり揃えたほうが時間短縮、体力温存の為には必要かもしれない、と思わせた。
新兵器、電動サンダーの登場ですね。安かったのでホムセンオリジナルだと思います。これも実家に置きっぱなしだったような…なかなか音がうるさかったので賃貸住宅で使うのは気が引けますね。確かにこれはペーパー掛けが早く済みます。こういう大きなものには打ってつけですね。とは言え、元々表面の粗いラワン合板ですので、実際に満足いくレベルだったかと言うと「まあ、このくらいで勘弁してやろう」でしたかね(笑)。あと、細かい作業はやはり自分の手や指の感覚がモノを言うので、手作業の方がやりやすいかもしれません。
(4日目続き)さて、その側板の接着だが、接着剤を少し薄めて刷毛で均一に塗る。そして貼り付けて端金で締めつける。端金の本数の関係で一台ずつしか出来ないが、4本でも足りなかった。それでも浮いた部分が出てきてしまうのである。そこで、締められる部分はCクランプを使った。板を2~3枚重なっただけの部分ならばこれで挟んでしまえば良い。そうして側板も2枚重ねて重厚感が出てきた。端金を使っている段階では塗装ができない。しばらく置いておき、その間他のスピーカーを片づけたりしながら、様子を見て端金やクランプを外してみる。また浮いてしまったら付け直し、浮かなかったら外してその部分から塗装していく、という作業となった。完成は近く、ようやく光が見えてきた。
胴体部分の上蓋と、足の部分を付けさえすればほぼ完成だ。まず足を付ける。足はブチルゴムで付ける。この方法は簡単なのか難しいのか分からないが、立てた状態になっている胴体をよいしょ、と斜めにするだけで付けられるので簡単なのではないか。それに、音質的にも何がしかの効果があるのではなかろうか、ということもある。足の次は上蓋。そして塗装。これらの作業を時間差でやっていくので思ったより早い時間で出来ていく。上蓋はサイド部分以外塗装の必要がないので、重しを載せたままペンキを塗ることが出来る。ペンキを塗りきってしまうと、つまりは胴体部完成である。
あらためてこの辺りを読んでいると、半日やそこらでここまでよく進めたものだなぁと少し驚きを感じます。困難にも慣れてきてテンションが上がっていたんでしょうね。足のブチルゴム接着は後にズレてしまって後悔しました(笑)。
(4日目続き2)既に完成していたヘッド部分と胴体部分を接着して本当の完成!なのだが、接着はしないことにした。接着して一つにしてしまったら、運べないほどの重量になってしまうではないか。長岡先生作「モアイ」のようなセパレート構造にすれば、移動するとき便利だ。平面同士を重ねるだけだし、ヘッド部の重さも大したものだから、接着しなくても変わらないだろう。
まあ、実際には接着した方が良いでしょうね。あまり運ぶことは無かったですが、今回例えばユニットを外したり箱を処分(また悲しくなってくる)する時に便利なことは間違いありません。
(4日目続き3)と、言うわけで胴体部をリスニング位置へ運ぶ。既に「ブルー」を先ほど撤去し、「105」は何とか邪魔にならないところに動かしている。インシュレーターも三点の位置を確認して設置済みだ。ちなみにインシュレーターだが、いつものテクニカコイン+J1プロジェクトの小さな少し柔らかめのものを載せて二重構造とした。コインだけだと、音が硬過ぎになりそうだったからだ。
胴体だけならば重いとはいえ、大したこともない。よいしょとインシュレーターの上に載せ、さらにヘッド部をパイルダー・オーン!って感じでドッキング。完全に重なった。これでやっと、やっと、やっと完成!
さあ試聴試聴。しかし、もう時間は8時を回っており満足な音量は出すことが出来ない。これを書いている段階ではリサ・エクダールちゃんが耳元で囁くように歌っているが(と言うか、机に向かっている、という状態ではそうなる)、まあまともな試聴は来週ですな。ちょっと残念だが、とりあえず今は完成の余韻に浸るのみ…でも歌声は物凄く生々しいですぞ。(02.5.6)
この「コイン+柔らかい素材」も後でズレました。「パイルダー・オン!」は「マジンガーZ」ですね(笑)。そんなこんなで色々ありましたが、何とか完成!しました。嬉しさと同時に大変ホッとした事を覚えています。ただ、夜なので大きな音を出すのは遠慮して、でも少しでもエージングを…と小音量で鳴らしていたのでした。次の休日まで我慢して、いよいよ試聴編です。
(完成後翌週)ムズムズしていたのだ、ここ数日間は。
何故かって、早く聴きたかったのだ、「BH-1609ES」を。夜中にひそひそと鳴らしたって、何の慰めにもならない。ようやくウィークエンドがやって来た。
前週出来たばかりに鳴らした時は、予想通りいかにもエージング前のがさついた低音不足だった。しかし、がさついてはいるものの、その中高域の生々しさは期待を抱かせるに十分なものだったのだ。
そんなわけで休日にしては早起きしてしまった。さあどれから鳴らす。どれからだ。
ところで、まだ開口部のデッドスペースに何も詰めていなかった。D-105と同様、砂利などを詰めて実際には完成なのだ。まあいいや、とりあえず。幾つか聴いてから買いに行こう。
まず、オーディオ評論家の小林貢氏がプロデュースしている「ライト&シェイド」を聴いてみた。これはリミッターでローカットしていないとかでベースの低域が物凄く伸びているという、チェックにはうってつけのCDだ。
おおおお、ずごごごーんと深く深くどこまでも沈み込んで行くぞベースが。こりゃ凄い。それにどうやらエージングは鳴らさなくても進行しているようで、かさつきや、低音不足はかなり解消されている。接着剤も固まったのだろう。
このバックロードは音道も長く、急激に拡げてもいないからでしょうか、かなり低いところまで出ました。これは嬉しかったですね。
(完成後翌週、続き)気を良くして買い物へ。砂利も一袋買ったが、キャンプなどで使うような折畳みイスも¥590と安かったので買った。これまでのスピーカーは胡座をかいた姿勢でちょうどよかったのだが、今回はさすがに背が高く、座っていては見上げる格好になってしまい、どうも良くない。低めのイスが必要だったのだ。
戻って再び試聴へ。もういろいろ。ルパンにケニーバロン、ケーブルレビューで活躍したギタースタンダード、ジョンステッチに綾戸智絵と来てポップスもと言うことでローリンヒルやらクラプトンのアンプラグド、ロックと言えばレッドツェッペリン、そしてクイーンのデジタルリマスターだぞ、おおそうだ長岡ファンにはお馴染のカウボーイジャンキーズもあるぞ、さらにはギター独奏といえばやっぱり可愛い可愛い村治佳織、ジャズに戻ってベースと言えばチャーリーヘイデンにクリスチャンマクブライドそして御大レイブラウン、古いのも行ってみるぞとビルエヴァンスにマイルス先生そしてアートペッパーだ、日が暮れてきたらやっぱりしっとりしたものも例えばブラッドメルドーやらキースジャレットなんかが良いやね、おっと忘れちゃいけないエージングといえば鬼太鼓座、驚異のコントラバスマリンバ。
…ゼイゼイ。ああ聴いた聴いた。聴きまくってしまったぞ。やっぱり16cmのバックロード、しかも超強力ユニットから繰り出される音は違うもんだな。実際は1枚1枚試聴レポートしようかとも思ったのだが、できん。とにかく圧倒されて終わってしまった。
また何だかテンションが上りまくっちゃってますね。我ながら微笑ましくもあります(笑)。ただこの¥590のイスは座り心地は最悪(笑)でした。長時間は無理ですね。後にまともなものを買うことになります。試聴曲も今とは異なっています。これらも良いですね、久しぶりに聴いてみましょうかね。
(続き2)ただ、特徴的なことは述べていきたい。低域はさすがに伸びており、と言うか鳴らしていくうちにさらに聞こえてくるようになったのだが、これまでぼやけてしまっていたベースの最低域がくっきりと出てくるのはうれしい。カウボーイジャンキーズに入っている超低域、足を踏みならす音がこれだけハッキリ聴き取れたのは感動的だった。ただ少々物足りない部分が一点、とは言え徐々に改善されてはきているのだが、例えばD-105に顕著だった開放的にぶりぶりとベースが鳴りわたる、ということがない。言ってみればボツボツとして暗いのだ。まあエージングで変わってくるのかもしれない。実際にかなり開放的になってきたのだ。105は特定の帯域にピークがあったので、それが心地よさにつながっていたということもある。
どうしても低域が伸びていると「暗い」感じになりがちではありますね。コンプレッサーをかけた音が好ましく聞こえるのはそういう事でしょう。バックロードの開口部がユニットに対して大きめの「D-105」に対して、「BH-1609ES」は若干小さめになります。その違いもあるでしょうね。
(続き3)しかし、ドラムは圧倒的だ。ジャズでもドラムソロは圧巻、これは低域も然ることながら高域の輝かしさも貢献している。ツェッペリンでもジョンボーナムがばしんばしん叩きまくるのが迫力満点、自宅でこれだけツェッペリンをカッコ良く聴いたのは初めてだ。ロックには小口径よりもやっぱりこれくらい口径があった方が良い。太鼓といえば鬼太鼓座、和太鼓の連発もクッキリと鳴らしてくれた。
無機質な音なのだろうか、という懸念は払拭された。村治佳織のギターも艶やかに鳴り渡り、マイルスのミュートトランペットはもう、そこにいる!と言わんばかりの生々しさだ。こういう管楽器がこれほど鳴るとは予想外だった。古い録音でも意外に強さを見せた。
まとめると、とにかくその弩迫力たるや圧倒的、これまでとはレベルの違いを見せつけてくれた。いわゆるハイスピードサウンドだが、決して無機質にならず、色気も十分に持ちあわせているのは大したもの。キレが凄いのにコクもある、という感じか。「シャキーンと切れ味はあるけど、薄口なのかなあ」という心配は見事に払拭された。厚みも十分あるのだ。一つ一つの音がハッキリクッキリ出ているのにさらにそれぞれが太く濃い。もう今までは何だったのか、という気さえしてくる。何せ「おお、こんな音も入っていたのか」とまるでオーディオ初心者のような科白を何度も吐いてしまったのだ。
しかし、D-105も勝てる部分がある。やはり女性ヴォーカルは8cmの方がいい。16cmだとちょっと口が大きく感じてしまうのだ。女性の繊細な声は口径の小さいほうが良いのだろう。
まだまだ試聴は始まったばかり。エージングもまだまだこれからだ。どんな音に成長していくのか、楽しみったらありゃしない。(02.5.12)
このスピーカーに出会えた事の嬉しさに満ち溢れていますね。「FE168ES」というユニット、どうしても10cmや20cmに比べると人気は落ちますし、当時音自体も他の限定ユニットに比べてあまり評価が良くなかったような記憶があります。内容は思い出せませんが、おそらくは大砲の音がイマイチ、とかそういう感じだったのでは。それが逆に自分にとっては良い音だったとも言えるのかもしれませんね。何せ12年もの間、メインとして愛用していましたからね。
まだまだ試聴記や対策は続きますが、このくらいにしておきましょうか。やっぱり手放すのが惜しくなってきてしまいますしね。書いてある通り、本当に出来上がりはボロボロで人には見せたくない程でしたが、それだけにむしろ愛着が沸いたものでした。自作スピーカーって、そこが良いですよね。作った当時の思い出が同居している…苦労と感動の度合いが高いものだっただけに、特にこの「BH-1609ES」には強くそれを感じるんです。
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