「長岡鉄男の仕事」読みました。

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オーディオ界に多大な影響を及ぼした長岡鉄男氏。その生誕100周年を記念して、「長岡鉄男の仕事」と題されたペーパーバックが音楽之友社から出版されました。今回は発売されてすぐに入手しました。「stereo」誌で宣伝していたのも大きかったですね。

何せ、自分にとっての影響が大きかった方です。自作スピーカーに目覚めさせてくれたことはもちろんですが、世の中を一度立ち止まって斜めから見てみるようなスタンスを学んだように思います。やはり手元に置いておきたい書籍と言えますよね。

そんなわけで購入したこの「長岡鉄男の仕事」。内容としては「音楽之友社」から刊行された(例外あり)雑誌・書籍から選ばれた文章、いわば「選り抜き」でしょうかね。これまで長岡氏関連の書籍をコンプリートされている方にとっては、お持ちの書籍のどこかに収録されている内容となるのかもしれません。

帯の一文には少々、疑問はありますが…

大きく6章に分かれていますが、0章として「My Audio History」と題された自伝的な内容になっています。これは私も持っているムック「観音力」に掲載されていました。そういえばあの本、自宅に置きっぱなしになっているな…少しずつこちらに持ってこないといけないけど場所が…などと関係ない事を思ってしまいましたが、やっぱり長岡氏の文章は面白い、と認識を新たにします。

第1章(「Works Vol.1」となっています)として「AUDIO CRAFT」、ここではまず代表的な長岡氏設計のスピーカー設計図が載せられています。これはありがたいですね。「スーパースワン」や「モアイ」「ネッシーⅡ」などまさに代表作ですから。個人的にはオリジナルを自分で設計して作る時にも何らかの参考になります。実際に作るのか、という問題はさておき。

そして「スーパースワン」の自筆図面をもとに、元編集者の2人が対談を行なっています。これはこの書籍オリジナルでしょうか。お二人の「長岡愛」にあふれた対談は大変ほっこりさせてくれます。

章後半は自作のヒントにもなる文章が選り抜かれています。これが本当にわかりやすく書かれているので、あらためて自作スピーカーの裾野を広げてこられたのだな、と納得できました。

画像悪すぎですが、「スワンa」です。

「Vol.2」は「DISC REVIEW」、そうすると「外盤A級セレクション」ですよね。ここでは名高い「日本の自衛隊」やハルモニア・ムンディやテラークといった高音質レーベルが代表して取り上げられています。個人的にはECMレーベルのエグベルト・ジズモンチ「ソロ」が取り上げられているのが嬉しいです。実はこういった「長岡盤」と知らずにオリジナル(西ドイツ盤)を手に入れて、「いい音だな~」と聴き惚れていたんですね。ある意味(?)、誇らしい気分になりました。

章の後半は長岡氏お得意の「ゲテモノ」について、当時発売されたばかりのCDについて、クラシック音楽についてなど舌鋒鋭く書かれた文章が取り上げられております。

「Vol.3」は「AUDIO REVIEW」です。こちらも長岡節炸裂のオーディオ機器レビューですね。こちらでセレクトされているレビューは「マランツ CD-34」「ケンウッド KP-1100」「オンキョー D-77」「ソニー TA-F222ESA」といった、長岡氏の太鼓判で売れたと言ってもいい銘機たちです。今でも修理を重ねて使用している方も多い「CD-34」やゴッキュッパ戦の狼煙を上げたとも言われる「D-77」は印象深いですね。個人的には「ソニー TA-F222ESA」の後継機である「ソニー TA-F222ESJ」を使っていたことがあるので、かなり思い出深いですね。「MOS-FET」を使った切れ込みの良い音は、まさにハイスピードでした(「ESA」はMOS未使用)。

章後半はオーディオに関するエッセイ。「アンプに鉛を載せる」「エージング」などのトレンドを作った元になる文章や、軽い皮肉とウィットに満ちた文章がセレクトされています。名著「いい加減にします」からの抜粋はやっぱり面白いですね。この本も実家に…

「Vol.4」は「PERSON AND LIFE」と題されて、長岡氏の人となりや生活が伺える文章をピックアップしています。エッセイストとしての側面がよく現れていて面白いですね。白眉は「トカトントン」という、「レコード芸術」に掲載されたエッセイです。趣味についての記述が「らしく」て、ここでもニンマリしてしまいました。あと、当時は焚き火は自宅で自由にできたなあ…と時代を感じさせる箇所もあったりしましたね。異色は「星新一」氏を思わせるショートショートが掲載されています。オーディオ・ショートショートとでも申しましょうか。「N氏」というのも星新一の登場人物でよく出る「エヌ氏」のオマージュでしょうね。

「Vol.5」がいよいよ「方舟」の登場です。「方舟」というホームシアター(&住居)とは如何なるものなのか。その解説あり、写真あり、「失敗」あり、そして訪問記あり。訪問記はジャズオーディオの寺島靖国氏が訪問した時の模様を、寺島氏の持ち味であるユニークな文章で綴られています。この文は寺島氏のムック本に掲載されていて私も持っています。例によってここには無いですけど…。

この章の最後に長岡氏が「夢」を語る文章があります。長岡ランド、諸国漫遊。そしてオーディオ喫茶。一つは後の「オーディオベーシック」誌における「漫遊記」に繋がっていくわけですね。夢を持ち続ける、これって意外に難しいんですよね。私は拙ブログでヴァーチャルなオーディオ喫茶を開いてはいますけど(笑)、コーヒーに凝りすぎなオーディオ喫茶ですね。本当にオーディオを絡めた飲食店を開店させる方々には畏敬の念を抱かざるを得ません。話が少し逸れてしまいましたが、ラストに余韻を残すこの文章を持ってきたのはまさに相応しい編集かと思いました。

やはり長岡ファンなら手元に置いておきたい本でした。なんだか夏休みの読書感想文のような内容になってしまいましたが、大人の感想文として時期的にはちょうど良かったのではないでしょうか。1週間ばかり、提出が遅れましたけどね(9/8)。

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