先ごろ惜しくも逝去されたジャズ・ジャイアント、ソニー・ロリンズ。何せ活動期間も長く、代表作に挙げられるようなアルバムは数多いのでどれを挙げようか迷いますね。サキコロとも略して呼ばれる「サキソフォン・コロッサス」、「ウェイ・アウト・ウェスト」、サントラの「アルフィー」、ブルーノートでジャケがカッコいい「Vol.2」など、どれを取っても名盤ばかりです。
今回個人的には挙げたくなったのは「ヴィレッジ・バンガードの夜」です。ブルーノートからリリースされた、タイトル通りジャズクラブであるヴィレッジ・バンガードで1957年11月に行われたライヴ盤です。ちなみに書店・雑貨店の全国チェーン「ヴィレッジ・ヴァンガード」はこのジャズクラブから名前を取ったんですね。先ごろ名古屋市天白区の本店が閉店して、地元民としては寂しい限りです。

さてこのアルバム、特徴的なのはピアノレス・トリオというところです。つまりワンホーンでピアノも鳴らないのでロリンズのテナーを思いっきり堪能できるんですね。ちなみにこの形式でのピアノレストリオ演奏で有名なのは「Way Out West」がありますね。レイ・ブラウンのベースが印象的なこちらも好きなアルバムです。
当日は午後の部、夜の部と分かれていて、それぞれリズム隊が異なっています。全6曲のうち、午後の部は一曲だけでした。メンバーは、
- ソニー・ロリンズ(ts)
- ウィルバー・ウェア(b)
- エルヴィン・ジョーンズ(dr)
- ドナルド・ベイリー(b)※午後の部
- ピート・ラロカ(dr)※午後の部
曲目は、
SideA
1. Old Devil Moon
2. Softly, As in a Morning Sunrise
3. Striver’s Row
SideB
4. Sonnymoon for Two
5. A Night in Tunisia
6. I Can’t Get Started
リリース当時の曲目を紹介しましたが、現在は「コンプリート」版が出ていまして、全16曲を聴くことができる状態になっています。ただ、ここではオリジナルに準拠して紹介しました。5曲目の「チュニジアの夜」だけが午後の部の演奏になっています。

ロリンズによる挨拶と曲紹介に続いて、1曲目の「オールド・デヴィル・ムーン」に入ります。お馴染みのスタンダードナンバーですが、本当に分厚くて聴き応え十分のロリンズのテナーが心地良いです。ライヴならではの臨場感や緊張感がトリオ演奏から伝わってきます。それにしても、ドラムのエルヴィン・ジョーンズ!やっぱり「違い」ますね。豪快というか自由というか…。人を惹きつけるドラミングだと思います。
次はこれまた定番「朝日のようにさわやかに」。穏やかに吹くテナーも味わい深いものがあります。中盤以降のアドリブも良いメロディになっていますね。こちらはベースのウィルバー・ウェアが活躍します。
3、4曲目はロリンズの自作曲。吹きまくっています。全てアドリブっぽくもありますが、その中に「歌」も確実に潜んでいます。ここはリズム隊がしっかりと支えていて、そこにロリンズが安心してテナーを鳴らす、そんな優しい世界です。
5曲目の「チュニジアの夜」。これだけは午後の部の演奏が使われています。夜の部の演奏と聴き比べたのですが、こちらの方がドラム(ピート・ラロカ)がパーカッション的に鳴らしていて、よりプリミティヴな雰囲気が出ているように感じました。エルヴィンの方は彼らしくシンバル主体でより「次世代的」なんですね、もちろんこちらも素晴らしい。
ラストは「言い出しかねて」。ムーディーになり過ぎる一歩手前な絶妙なラインで低音を活かしたテナーが光ります。そこからのベースとドラムがいい塩梅で入ってきますね。まさにグッド・タイミング。アルバムのラストを締めるのに最適な、しっとりと味わいのある演奏でした。

まさに「ジャズ・ジャイアント」と呼ぶにふさわしい、堂々とした歌心溢れる演奏にはあらためて心を打つものがありました。よく知られたスタンダートナンバーが多いので、「なるほどロリンズはこんな演奏でこの曲を活かすんだな」という楽しみ方もできますね。楽器演奏に「その人」が現れる、音楽って良いなあ、と思う瞬間だったりします。特にロリンズは出す音が「ロリンズ」だなあ、とニンマリしてしまいます。
ところでこれは全くの蛇足なんですが、「ロリンズ」と何度もキーを打っていて思い浮かべてしまうのは、現在アメリカのプロレス団体「WWE」で活躍する大スター選手「セス・ロリンズ」なんですよ。正直に告白しました。いやすいません、プロレスファンなもので…。と、なんだか天国のソニー・ロリンズ氏に申し訳なく思いつつ、この章を書いておりました。お目汚し、大変失礼いたしました。



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