これまで80年代の特異性みたいな切り口でお話ししてきたかもしれませんが、当然「時代には関係無い」名盤というものも存在するわけです。音作りにしてもいわゆる80年代らしさみたいな要素はゼロではないにしても希薄で、だからいつ頃の作品なのか分からない「あ、これも80年代だったっけ」みたいな感覚ですね。今回はそういった時代を超えたアルバムを紹介したいと思います。
ヨシュア・トゥリー / U2
何と言っても「With Or Without You」「I Still Haven’t Found What I’m Looking For(終わりなき旅)」という2曲のキラーチューンを持つ大名盤ですよね。「熱い主張を持つロックバンド」だった彼らですが、ここから大きく飛躍しました。このアルバムが無かったら、U2は前回の「英国勢」の括りでお話していたのかもしれません(実際はアイルランドですけどね)。まさに別格になった感がありますね。
ナイトフライ / ドナルド・フェイゲン
まさに時代を超えて普遍的な作品と言えるのではないでしょうか。まあ、以前にも取り上げていますけど音作りの格好良さは格別ですね〜。ジャケット写真に引き摺られる感も大きいかもしれませんが、アレンジやフェイゲンの声が何か「夜の都会」的なものを想起させてくれます。これも以前お話ししましたが、自分にとってはジャズへの入り口になってくれたアルバムでもありますね。
パープル・レイン / プリンス
音作り自体は80年代テイストも感じますが、それをものともしないプリンスの「個」が全体を制圧していて、故にこの名盤を名盤たらしめていると思います。天才プリンス、ここに有り!を世間に示した作品ですね。ソングライターとしてもプレーヤーとしても評価は上がるばかりで、皮肉な話ですが惜しくも逝去された事で神格化までされました。個人的には「サイン・オブ・ザ・タイムス」も好きですけど…
ドキュメント / REM
「カレッジチャートの王様」がメジャーシーンも脅かす事になったきっかけの作品。それこそ当時大学生だった自分は「これは素晴らしい、名盤に出逢えた〜」と狂喜していたことを思い出します。「The One I Love」の「ファイヤ〜!」とシャウトするところが何とも切なく感じましたが、歌詞にはどうやら隠れた意図があるようです。ここではあまり言いたくないような…。このアルバムのヒットでメジャー契約、次作「グリーン」も大ヒットしてその後90年代には大物ロックバンドの仲間入りをしたと言えるでしょう。
ヴォリューム・ワン / トラヴェリング・ウィルベリーズ
「全員サングラスをしているだけの覆面バンド」というのが何とも微笑ましい、しかし正体は驚愕のメンバーという…。ボブ・ディラン、ロイ・オービソン、ジョージ・ハリソン、トム・ペティ、ジェフ・リンという豪華絢爛な覆面バンドなわけです。プロデュースはジェフ・リンが行っているのでサウンドはエバーグリーンなビートルズ愛に溢れた音作りで、これがヒットに一役買いました。レジェンド達の声の個性が光る傑作です。
バック・イン・ザ・ハイライフ / スティーヴ・ウィンウッド
この作品までは「すごい人だけどあまりよく知らない」ミュージシャンの代表格的存在だったのではないでしょうか。大ヒット「Higher Love」で一気に突き抜けました。ソウルテイスト溢れるキーボードがブルーアイド・ソウルという枠を超えた存在である事を知らしめてくれます。最近でもソウル・ジャズに寄ったグルーヴィーな作品を出していますね。
ザ・ウェイ・イット・イズ / ブルース・ホーンズビー&レインジ
ホーンズビーの弾く美しいピアノの旋律が頭から離れない、そんな名盤かと思います。ロックにおいてギターのリフには印象的なものが多いですが、ピアノによるリフというのは決して多くはないですよね。それだけならば玄人好みのアーティストという認識で終わってしまうかもしれませんが、さらには「売れる」ツボも押さえたメロティメーカーであることも大きかったでしょう。
スティング / ブリング・オン・ザ・ナイト
ポリス活動休止後、クオリティの高いソロ第1作の次に発表されたのがこのライヴ盤。当時の精鋭ジャズミュージシャン(ブランフォード・マルサリス、オマー・ハキム、ケニー・カークランド、ダリル・ジョーンズ)をバックにインプロヴィゼーションも激しく火花を散らす傑作となりました。ジャズにどっぷりハマって以降の耳であらためて聴くと、いや〜これは本当に凄いわ。演奏技術の高さと今や名手となったミュージシャンたちの若さから来るテンション…そしてそれに応えるスティング…。ジャンルを超えた名盤です。
絞りきれずに8作挙げましたけど、どれも80年代とかそういうお題目には当てはまらない名盤と思います。是非一度は聴いてほしい、久しぶりに聴いてみて欲しい作品ばかりです。
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